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ひろば
広場
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页
そのかげには愛する弟のいのちをも裏づけているここの三年よ、もし、自分をここに止めておこうとする好意があるならば、きっと自分がこれから起きたりころんだりしつつ、なおそれを愛し価値あるものにして行こうとする誠意をもよみしてくれるだろう。
朝子はその夜殆ど睡らなかった。次の朝はこの北の都に初雪が降った。窓の前にある建物の屋上に浅くつもった雪の反射で、朝子たちの薄青い部屋のなかは透きとおった清潔な明るさに充たされ、いつもより広々したような感じになった。朝の茶をのみ終ったとき、朝子はしずかな声で、
「私帰ることにきめたことよ」
と云った。素子が何か云いそうに口をすこしあけた。が、言葉は出なかった。やはりあたり前の心でいられなくなって、朝子は立って窓べりにゆき、朝の微かなどよめきの中に白く燦いている屋根屋根を眺めやった。