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しょみんのたべもの
庶民の食物
小泉 信三
「あまカラ 新年号 第六十五号」甘辛社、1957(昭和32)年1月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,974 字 · 4 页
私はそうたびたびは出会わないが、小料理屋の主人などに、客に対し、ウマイものを食わしてやるという顔をするのがあるのは、閉口だ。主人自身もだが、またその主人の意を迎えて、阿諛追従の見本を示す客もあるのは、なお困ったことである。いつかアメリカの雑誌に、ニュウヨオクのある大料理店の給仕長(だった男)の、チップに対する経験談が載っていた。客に対してどのようにサアヴィスするのが一番貰いが多いか、というのである。彼の結論は、いんぎん鄭重にするよりは、無愛想で、威嚇的であるほうが好成績だというのであった。なかなか面白い話だと思って読んだ。もしはたしてこのとおりであるなら、「食わしてやる」タイプの料理屋の主人は、よく考えた商売上手ということになり、事実もそのとおりに違いあるまいが、客の一人としては、やすやすこんな手に乗って、合唱する仲間の多いことは、口惜しき次第である。
(こいずみ しんぞう、東宮御教育参与・経博・元慶応義塾塾長、三二・一)