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しょみんせいかつ
庶民生活
豊島 与志雄
「改造」1952(昭和27)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,353 字 · 21 页
朋子は初めから黙っていたが、内山も先程から黙り込んでしまった。銚子が空になると、つと立ち上った。
「帰ろう。」
朋子が勘定するのも待たないで、先に出て行ってしまった。
おばさんは朋子に小声で言った。
「あのひと、酔っ払ってるんですから、気を悪くしないでね。」
「いいえ、どうしまして、お互さまですもの。」
朋子は声も低めずに答え、平然たる様子で、内山のあとを追って行った。
おばさんは中村の方を向いた。
「中村さん、少し言い過ぎでしたね。いくら酔ってるからといっても、気をつけるもんですよ。」
中村はけろりとしていた。
「言い過ぎって、何が言い過ぎですか。」
「内山さんや山田さんのことを、さんざん言ったじゃありませんか。」
「何も言やしません。わたしはただ、自分のことを饒舌っただけですよ。それにしても、少し饒舌りすぎたかな。そんならおばさん、謝っといて下さい。その代り、女房のやつにうんと言ってやるから。また喧嘩かな……。」
中村は焼酎をなめて、大きく溜息をついた。
三人連れの客がはいって来た。それがきっかけのように、中村はもう口を利かなくなった。
内山と朋子は相変らず峠の茶屋にやって来た。