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はいとうだいのかいちょう

廃灯台の怪鳥

山本 周五郎

「少年少女譚海」博文館、1938(昭和13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,578 字 · 18 页

青空文庫

見よその頸には怪鳥の爪痕が!

見よその頸には怪鳥の爪痕が!

「きゃーッ」

遠くの方から、幾つかの反響を呼び起しつつ、微かに長く人の叫び声が聞えて来た。

寝台に横わったまま、枕卓子の上の洋灯の光で雑誌を読んでいた桂子は恟としながら頭を擡げた。――岸を噛む怒濤が悪魔の咆叫ぶように、深夜の空に凄じく轟いているほかは、ひっそりと寝鎮った建物の中に、何の物音もしていない。

「変ねえ、いま慥かに人の声が……」

呟きかけた時、今度こそ確きりと、それも胸を抉られるような怖ろしい声で、

「きゃーッ」と云う悲鳴が聞えて来た。

遠い方から曲り曲って来た声だ。慥に塔の上からである。桂子は慄然としながら寝台をとび下りると、父の部屋へ馳せつけて力任せに扉を叩いた。

「お父さま、大変よ、お父さま」

「……どうしたんだ」

「起きて頂戴、早くッ」

寝衣の上へ寛衣を引掛けながら、宗方博士を先に、助手の新田進も洋灯を持ってとび出して来た。

「何だ、どうしたんだ」

「いま、上の方できゃあッて云う声がしたの、二度もしたのよ。何か変った事があったに違いないわ、見に行ってよ」

「そうか、兎に角行ってみよう」

即座に、洋灯を持った新田を先頭に、博士と桂子の三人は階段の方へ馳せつけた。