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はいとうだいのかいちょう

廃灯台の怪鳥

山本 周五郎

「少年少女譚海」博文館、1938(昭和13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,578 字 · 18 页

青空文庫

――出血はひどいが生命に別状はなさ相だ。新田は寛衣の裾を引裂いて手早く繃帯をしながら、

「吉井、おい、確りしろ」

「…………」

「僕だ、先生もいらしってるぞ、吉井ッ」

耳許で叫ぶと、吉井はふっと眼を明けたが、とたんに右手をあげて壁の一部を指しながら、

「あ、あれ、あの鳥が……」

と怖ろしそうに、もつれる舌で云いかけたまま再びぐたりと気絶して了った。

三人は指示された処を見やった。その壁の一部には、もう羽根もまばらになった怪鳥の剥製が飾付けてある。――左右に広げた翼は凡そ二米突に余り、全身真黒な羽毛に包まれ、鷲のような鋭い爪のある両足を踏ひらいている。是は博士たちが来た時すでに飾付けてあったもので、何十年となく年古りているし、一体なんの鳥なのか全く分らない。鷲でもなく鷹でもなく、云ってみれば前世紀の猛鳥という感じである。

「お、お父さま!」

桂子が突然叫んだ。

「あの鳥の爪に血が……」

「えっ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

新田が洋灯をさしつけた。見よ、怪鳥の爪が生々しく血に染っているではないか、――三人は愕然として息をのんだ。

高さ百五十呎の廃灯台の絶頂、塔の外側はなんの足懸りもない絶壁だ。