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はいとうだいのかいちょう

廃灯台の怪鳥

山本 周五郎

「少年少女譚海」博文館、1938(昭和13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,578 字 · 18 页

青空文庫

宗方博士は困惑を隠さずに云った。

「何しろ外側はあの通りなんの手掛りもない絶壁ですし、中は螺旋階段一本で、何処にも犯人の隠れる場所はありません。第一なんのために吉井を殺そうとしたのか、それからして想像もつかぬのです」

「恐らくそうだろうと思いました」

「え? ――そう思ったと仰有るんですか」

「宗方さん」

金森村医は煙草の煙を見やりながら、

「私は同じ事件に逢っています。是は今度が初めてではない。この灯台が廃止されて野山岬の方へ移されたのも、つまり斯うした事件が原因をなして居るんです」

「お話の意味がよく分りません」

「つまり斯うなんです」

金森村医は喫いさしの煙草を投げて向直った。

「二十年ほど前のことです。或夜この灯台の灯を慕って一羽の名も知れぬ怪鳥が舞込んで来ました。当時此処に田口という若い看守がいましたが、この男が怪鳥をみつけて拳銃で射殺し、剥製にして壁へ飾付けたのです」

「今もあるあの鳥ですね」

「そうです」

金森村医は暫く眼を閉じていたが、やがて低い声で続けた。

「不思議な事件はその夜から起りました。昨夜と同じように、その田口という男が発光室で喉を掻切られて死んでいたのです。