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ゆみまちより

弓町より

石川 啄木

「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页

青空文庫

すなわち真の詩人とは、自己を改善し自己の哲学を実行せんとするに政治家のごとき勇気を有し、自己の生活を統一するに実業家のごとき熱心を有し、そうしてつねに科学者のごとき明敏なる判断と野蛮人のごとき卒直なる態度をもって、自己の心に起りくる時々刻々の変化を、飾らず偽らず、きわめて平気に正直に記載し報告するところの人でなければならぬ。

記載報告ということは文芸の職分の全部でないことは、植物の採集分類が植物学の全部でないと同じである。しかしここではそれ以上の事は論ずる必要がない。ともかく前いったような「人」が前いったような態度で書いたところの詩でなければ、私は言下に「すくなくとも私には不必要だ」ということができる。そうして将来の詩人には、従来の詩に関する知識ないし詩論は何の用をもなさない。――たとえば詩(抒情詩)はすべての芸術中最も純粋なものであるという。ある時期の詩人はそういう言をもって自分の仕事を恥かしくないものにしようと努めたものだ。しかし詩はすべての芸術中最も純粋なものだということは、蒸溜水は水の中で最も純粋なものだというと同じく、性質の説明にはなるかもしれぬが、価値必要の有無の標準にはならない。