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きゅうどうちゅうそでん

弓道中祖伝

国枝 史郎

「キング」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,647 字 · 19 页

青空文庫

が、さすがに雉四郎ばかりは、一党の頭目であったので、逃げもせず立ったまま大音を上げた。

「やあ汝出過者め、無縁とあらば事を好まず、穏しく控えて居ればよいに、このあばら組に楯衝いて、箭を射かけるとは命知らずめ、問答無益、出た杭は打ち、遮る雑草は刈取らねばならぬ! さあ方々おかえりなされ! 弓勢は確かに凄じくはござるが、狙いは未熟で恐るるところはござらぬ。冑の前立をかつかつ射落とし、眉間を外した技倆で知れる!」

すると正次は嘲るように云った。

「雉四郎とやら愚千万、昔保元の合戦において、鎮西八郎為朝公、兄なる義朝に弓は引いたが、兄なるが故に急所を避け、冑の星を射削りたる故事を、さてはご存知無いと見える。拙者先刻も申した通り、我と貴殿と恩怨ござらぬ、それゆえ故意と眉間を外し、前立の鹿角を射落としたのでござるぞ。それとも察せずに只今の過言、狙いは未熟とは片腹痛し、おお可々ご所望ならば、二ノ箭にてお命いただこう。……参るゾーッ」と背後を振り返り、床の間にある調度掛の箭を、抜き取ろうとして手を延ばした。

5

途端に箭が一條眼の前へ出された。

「いざ、これで、遊ばしませ」