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きゅうどうちゅうそでん
弓道中祖伝
国枝 史郎
「キング」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,647 字 · 19 页
連れて箭が足下へ叩き落とされた。
「お見事」と又も女の声がし、すぐに続いて問いかけた。
「弓箭の根元ご存知でござるか?」
「弓箭の根元は神代にござる」
言下に若武士はそう答えた。
「根の国に赴きたまわんとして素盞嗚尊、まず天照大神に、お別れ告げんと高天原に参る。大神、尊を疑わせられ、千入の靱を負い、五百入の靱を附け、また臂に伊都之竹鞆を取り佩き、弓の腹を握り、振り立て振り立て立ち出で給うと、古事記に謹記まかりある。これ弓箭の根元でござる」
「さらに問い申す重籐の弓は?」
「誓って将帥の用うべき品」
「うむ、しからば塗籠籐は?」
「すなわち士卒の使う物」
「蒔絵弓は?」
「儀仗に用い」
「白木糸裏は?」
「軍陣に使用す」
「天晴れ!」と女の清らかな声が、築山の方からまた聞こえてきた。
「お若いに似合わず技巧ばかりでなく、学にも通じて居られますご様子、姓名をお聞かせ下されよ」
「伊賀の国の住人日置正次、弓道の奥義極めようものと、諸国遍歴いたし居るもの。……ご息女のお名前お聞かせ下され」
すると代わって老人の声が、遮るように聞こえてきた。
「あいや、ご無用、まだ早うござる。……なるほど防身は確かでござる。