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とうこんのげきだんをこのままに

当今の劇壇をこのままに

岡本 綺堂

「新声」1910(明治43)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,568 字 · 4 页

青空文庫

菊五郎吉右衛門も、今と大差なしで固ってしまうだろうし、歌舞伎座幹部連もいずれも年配で、先が見えている、大器晩成と顧客がいう栄三郎もチト怪しいものである。もっとも今の羽左衛門が家橘といった頃は拙さ加※はお話になったものでなく、私は到底今のようになろうとは思わなかった、私が明治三十五年頃、歌舞伎座へ『柿木金助』という新作物を書いた、筋は名古屋の金のしゃちほこを凧に乗って盗むというのだが、その金助の役を八百蔵に書き下したところ、芝居では家橘にやらそうというので、私は「あんな下手な人は御免だ」と断った事がある(とうとう家橘が演じたが)。それほどであったので、到底今の羽左衛門とは思いも依らなかった。団十郎も三十歳までは大根の頭梁であったというから栄三郎またどうなるか分らぬが先ず先ず怪しいものである。さて高麗蔵とてどうだか? 団子は気はあるようだが柄で難かしく、挙げ来れば左団次であろう、あの人が歌舞伎式で成功するとは决していわぬ、新しいもので行ったらばと思うのである。左団次に扈従している左升は旧劇物では駄目だが、新しいものだと仲々よくなる、新作物にちょっと巧い俳優であるが、然しこの位の俳優ならばいくらもあるのである。