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こころにうずくよっきゅうがある
心に疼く欲求がある
宮本 百合子
「中央公論」文芸特集号第四号、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,908 字 · 24 页
そして、悲劇もシェークスピアにおいては、何かその原因となるデスデモーナのハンカチーフのようなものをもっている。オセロの敏感な自尊心――黒人の劣等感のうらがえされたもの――そのものと、イヤゴーのユダ的性格そのものが、性格と性格の格闘として悲劇を形成している。
現代の悲劇というより、むしろ正劇は、個々の性格間の格闘というよりも拡大されて、人間理性の発展にあらわれてきた歴史と歴史のギャップ、相剋という普遍性をもつたたかいの記録に進んで来ている。日本の現代文学は、世界の現実としてのこれら日本の現実を描きつくす義務をもっている。
現代文学は非常にかわる。――そういう予感にみたされている人は案外に多いのではないだろうか。
こんにち書き改められようとしている東洋史――東南アジア史は、こんにちの東南アジア諸国の大部分が、数百年の過去には、それぞれの民族としてのすぐれた文学その他の芸術をもっていたことを告げている。
ジャーナリズムの上に氾濫している小説の数によって、一つの民族がろくな文学も持たない「島の住民」となる危険から保障されていると云えるものはない。一つの民族の社会と文学の健全にとっては、少数の西欧文学精神のうけつぎてが、自国の文学について劣等感に支配されつつ、翻訳文学であるならば、つとめてその優性をひき出すとして