轻松读懂日语经典作品
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こころのアンテナ
心のアンテナ
佐々木 邦
「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页
学校出の内弟子
学校出の内弟子
「四から芸引く、零残る。斯ういう算術を御存じですか?」
と銀太夫君が師匠の令嬢美代子さんに訊いた。
「何あに? もう一遍」
「師から芸引く、零残る」
「分らないわ」
「師匠から芸術を引くと零が残ります。師匠マイナス芸術、イコール零」
「そんなこと誰が仰有るの?」
「僕が考えたんです。師匠ぐらい芸道熱心の方はありません。寝ても覚めても、義太夫のことを考えていらっしゃいます」
「その代り世の中のことを些っとも知らないんですって」
「それですから零残る。芸術を引けば何にも残らないんです」
「お母さんの仰有ることを算術の式に現したのね」
「えゝ、先ずその辺です。師イヽかアヽラ、芸イ引イク、ウヽ、ウヽ、ウヽヽヽヽ……」
「馬鹿ね」
「ハッハヽヽヽ」
当時、銀太夫君は入門未だ日が浅かった。令嬢の美代子さんは女学校の二年生だった。内弟子と親しく話しても、一向差支ないお河童さんだったが、矢張りその頃からもう大きな存在になっていた。尤も美代子さんのところでは家中が皆大きな存在だ。お父さんは東都義太夫界の重鎮、豊竹鐘太夫、内容から言っても恰幅見ても、決して小さい存在でない。お母さんはこの御主人を今日あらしめた内助の功労者だから、これ又大きな存在である。