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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

夕食になっても、謹慎の意味で籠っていた。間もなく襖が静かに開いた。考え込んでいたから気がつかなかったが、美代子さんが入って来たのだった。

「銀さん」

「ひえ?」

「あなた、短気を出しちゃいけませんよ。あなたのお心持、私、分っているんですから」

「僕、決して悪気があって申上げたんじゃありません。師匠が笑って下さると思ったんです」

「そのことじゃないのよ」

「何のことですか? それじゃ」

「あなたのお心持、初めから分っていますの。四年生の頃からよ。学校の下読みをして戴いた頃からよ」

「へゝえ」

「あなた、心のアンテナってことを仰有ったでしょう? 人間には誰にも心のアンテナってものがありますって」

「へえ」

「私、あれからよ。心のアンテナで、あなたのお心持が分っていますわ。お母さんもあなたのお手柄、今までお父さんにお尽しになったこと、悉皆承知していますわ」

「有難いです」

「お父さんに御機嫌を直して貰って戴きますわ、私」

「何うぞ」

「お母さんと私が組めば大丈夫よ。お母さん丈けは私があなたを厭がっていないこと知っていますのよ」

「…………」

美代子さんは後ろへ廻って、銀さんの背中を擦ってやった。