轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こころのかわ

心の河

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,442 字 · 37 页

青空文庫

「この次来る迄に頼むよ。見つけて置いてくれ給え」

樫と栗の生垣に沿って曲ると、道は、両端に雑草の茂った田舎道になった。左側にはとろとろ月に輝いて流れる溝川があった。右手には、畦の低い耕地が、処々に杉森で遮られ、一面の燦く透明な靄のような月の光に覆われている。聖者の円光のように遙かな暈をもった月は、いよいよ彼等に近く見えた。一つの星はますますキラキラと美しく閃く。保夫は、こんなに夜が生命に満ち溢れているのに、あの友達が独りで麦酒(ビール)に酔って帰るのが哀れだという風に呟いた。

「本当に誰かないものかな。――君の友達なんか大勢あるんだろうのに……戯談(じょうだん)らしく云ってはいるが本気なんだよ、山岡のは――」

さよは、ぼんやり答えた。

「そうね」

保夫は、黙り込んだ。口笛を鳴らす気にもなれないほど、四辺の景色は静かで、夢のようである。さよは、草履の足元にまるで気をつけず、光の裡を泳ぐようにして歩きながら、頻りに一つことを思った。彼女の心は、山岡が面白そうに幾度も繰り返して云った以心伝心という言葉のまわりを、丹念に廻っているのであった。

全くそう云われて見ると、自分達の生活にはそんなことが少くない。