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こころのしらべ

心の調べ

宮城 道雄

宮城道雄『心の調べ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:心の調べ、雨夜の駅、音の世界に生きる、垣隣り、声と食物、声と性格、声と人柄、五十年をかえりみて、純粋の声、春雨、耳の日記、昔の盲人と外国の盲人、山の声、私のすきな人、私の若い頃、レコード夜話。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,958 字 · 66 页

青空文庫

愛しさを覚えずにはいられないのである。

やがては、誰しも騒音も何も聞こえぬ所へ行かねばならぬのだから、せめて生きている間は、騒音でも何でも聞こえることに感謝しなければならぬと思う。

それが、音の世界に生きる私共の――少くとも私の「こころ」である。

先天的の失明でなかったから、私には色というものの記憶が少しはあって、作曲するにはやはりその色を思い出す。はっきりは出ないが、何かやはり眼に浮かんで来るものがある。それと音とが一緒になるのである。どうといって具体的にはいえないが、音にもやはり色はあるもので、あの西洋の作家なんかでも、ドレミファをそれぞれ自分の頭の中でいろいろ勝手に色を出している人があるそうだし、極く普通に黄色い声などというのもそれであると思う。

自然の音は、私共にとって最も親しいものである。風の音、雨の音、虫の音、小鳥の囀る声、何一つとして楽しくないものはなく、面白くないものはない。

同じ風でも、松風の音、木枯の音、また撫でるような柳の風、さらさらと音のする笹の葉など、一つ一つに異った趣きのあるものである。

私は雨の音が殊に好きである。とりわけ春の雨はよいもので、軒から落ちる雨だれの音などきいていると、身も心も引き入れられてしまうような感じがする。