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こころのしらべ
心の調べ
宮城 道雄
宮城道雄『心の調べ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:心の調べ、雨夜の駅、音の世界に生きる、垣隣り、声と食物、声と性格、声と人柄、五十年をかえりみて、純粋の声、春雨、耳の日記、昔の盲人と外国の盲人、山の声、私のすきな人、私の若い頃、レコード夜話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,958 字 · 66 页
或る義太夫語りは或る地方に行って、初日の日にテンプラを食べて出演したため声を悪くして、初日を滅茶々々にしたという話しがある。このテンプラの話しも唄う直ぐ前のことで、時間を経てば差し支えないと思う。
また、私の経験によると、林檎のようなもの、レモンのような柑橘類の少し熟したものを食べると、声のよく出ることがある。それも人によって違うかも知れぬが、多くの場合一寸酸味のあるものはよいようであるが、鮨などはあまり食べない方がよく、酢は殊にいけない。そして、声を出すのに大切なことは、胃を悪くしないことである。私は唄う前には決して食物をとらない。たとえ食べても、腹八分目にしておくのである。重ねていうておくが、この食養生は唄う直ぐ前のことである。
少し話しが専門のことになったが、普通の婦人たちが話しをする時も、なるべく美しい声を出して貰いたいと思う。近ごろの若い婦人はかなり音楽的な声や言葉になって来たところもあるように思う。婦人が夫を慰めるのは、あながち、容貌とかお化粧だけにあるのではなく、これは私の音に生活しているためかも知れぬが、声や言葉にもあると思う。夫が疲れて帰って来て、優しい言葉や声で慰めて貰えば、夫婦喧嘩は起こらないだろうと思う。