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しんりしけんをよむ

『心理試験』を読む

平林 初之輔

「新青年 第六巻第一二号」1925(大正14)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,253 字 · 5 页

青空文庫

とを強調しておられる。じっさい西欧人の作品にばかりなれた私どもには、これらの作品に通ずる「東洋的」色彩をはっきりと感ずることができる。けれども、これまで、日本の探偵小説ばかりよんでいた人を仮定して、その人が『心理試験』から受ける感じは、恐らく「東洋的」ではなくてモダンという色彩であろう。「日本刀のニオイ」の他に、注射針の感覚や麻酔薬のニオイにも打たれるであろう。

というわけは、「日本的」であるにかかわわらず、かなり大胆に「日本的」を脱しているという意味なのである。特に「赤い部屋」などにおける、変質者的刺激追求者の心理の描写には少なくも伝統的な「日本的」と相容れないものがある。奔放に「日本的」の堰を躍りだしているところがある。これほどの奔放さは、江戸川氏自身の私淑する谷崎潤一郎氏をおいて他に類例がない。そして谷崎氏は日本的よりもより多くコスモポリタンである。

犯罪が構成されるには色々な動機や機縁があるであろうが、江戸川氏は、その中で特に、変質とか偶然とかに興味をもっているように思われる。そこで犯罪のための犯罪、刺激のための刺激、探偵のための探偵といってもよいような場合が許されている。