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しんぞうとうなん

心臓盗難

海野 十三

烏啼天駆シリーズ・2

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,434 字 · 21 页

青空文庫

実にかの天駆の技術に至っては正に世界一――いや実に憎むべき天駆めである」

ほめているのか、憎んでいるのか、さっぱり分らない。

「なるほど、そういうわけで猫々先生は、烏啼の仕業と判断せられたわけですな」

捜査課長の虻熊警視が挨拶をした。

「いや、烏啼が下手人である証拠は山のようにありますぞ。あなたがたはそれに気がつかれないのですか」

「どうも残念ながら……猫々先生の専門眼を以てお教えにあずかりたい」

言葉の意味とは違って、ぶっきら棒に、課長はいった。

「あなたはわしをおからかいなのではないでしょうか。いいですか。心臓をちょん切って持っていったのを第一とし、次にこの黒い四角い包みがそうなんですが、これは代用心臓が入っているんです。スットン、スットンと音がしているでしょう。あの音は、この箱の中に仕掛けてある喞筒が、正しく一分間に六十回の割合で、この青年の血液を、心臓に代って、全身へ送り出しているんです」

「ほほう」

と、検察官たちは、黒箱へ耳を寄せて、おどろきのあまり口を丸く開く。

「お分りになったでしょうな。このような優秀な代用心臓を供給し、それを見事に取付ける手際からいって、その下手人は烏啼めの外にはないと断言ができます。