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しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件
「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页
「しかし、あなた、私の方の側にいちゃア、鉄丸を投げたり、ガラガラを投げたり、いろいろなものを上へ投げたり振り廻したりするのだから、それじゃアとうてい実演するわけにいきません」
「それはもッともだ。そっち側の警官は不要なのだから、邪魔にならない隅の方へ、その床の間のあたりへ集まるがよい」
ようやく準備ができた。被害者の方へ忍んで行くのは辰男、茂手木、糸子の三名の代人だけらしく、三名のうしろのそれぞれの位置に警官がいる。また、岸井、九太夫、勝美のうしろは無人のところを、ここには聴き役の警官が座についている。
糸子が電燈を消してきた。
「オーウ」
という八十松の遠吠え。警官の隊長が代りをつとめたらしくポータブルが鳴りだした。それからは先夜そのままである。さすがに八十松の芸は巧妙で、時間の間隔まで間髪の差もなく、舞い廻る品々も同じ場所に同じ動きを示したように思われた。
こんなことをやってみたって、実はムダにすぎないのだ。心霊術に注意を集中している場合と他の物音に注意を集中している場合とではその差甚大ではないか。甚大すぎる差と云えよう。それですら物音はほとんどききとれなかったのだから、この実演の結果は全員の容疑が一様に深まっただけで、特定の一人の容疑を深めることは完全に失敗に終ったのである。