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しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件
「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页
その心を人の形に現せば一寸法師の客ひき番頭のような姿に化するのかも知れない。
「失礼ですが、皆さんは一ツ腹の御兄妹でいらッしゃいますか」
「一ツ腹に見えないのですか」
「四人の方々それぞれお顔に似たところがございませんのでね」
「よくよく似てないらしいですね。皆さんがそのように仰有るのですよ。ですが一ツ腹の兄妹なんです。似てないのは顔だけじゃありません。心も性格も全然別々なんですよ。至って仲も良くないのです。四人に一ツ共通なのは父を憎んでいることだけです」
姉がまだ言い終らぬうちから、妹はカラカラと小気味よげに笑いつづけた。九太夫も小さい時からの奇術師商売、日本はおろか海の外まで廻り歩いて、ちょッとのことでは物おじしないタチであったが、この姉妹には少々ビックリさせられた。心霊術のカラクリ同様、人間の心のカラクリも概ねタカの知れたものであるが、後閑仙七一族の心ばかりは人間なみでは計りきれないような感じをうけた。心霊術の実演よりも後閑一族の心のモツレを目にする方がどれぐらいまたとない観物だか知れない。多年きたえた奇術師の眼力でとくと観察してみようと思ったのである。