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いかりのむし

怒りの虫

豊島 与志雄

「群像」1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,457 字 · 24 页

青空文庫

別れようと僕に言わせたいんでしょう。そんならそれでよろしい。御随意になすって下さい。」

ぐるぐる歩いて、それから炬燵に半身を入れて仰向きに寝そべった。

≪俺は何を言ってるんだ。肉体に訣別して、そしてなにかしら精神的な愛情を求めて、あっぷあっぷしてるんじゃないか。それがどうして言葉に言い現わせないのか。なぜ率直に彼女に言えないのか。≫

由美子の手が伸びてきて、彼は引き起された。

「別れるなら別れると、はっきり致しましょう。ふてくされた真似は、わたしいやですわ。」

「僕もいやです。」

「そんなら、どうなんですの。」

「理屈も僕はいやです。同じことを繰り返すのもいやです。あなたと別れるのもいやです。何もかもいやです。僕は自分自身までいやになってるんです。腹を立てさせないで下さい。」

めちゃくちゃだった。ただもう酒を飲むより外はなかった。

「それでは、今迄通りでよろしいんですね。」

話は少しも進展せず、また同じようなことが繰り返された。するうちに、木山はふいに言い出した。

「僕は決心しています。塚本さんに逢ってみるつもりです。」

由美子は顔色を変えた。

「あなたが、まあ、そんなことを……。