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きゅうこうじゅうさんじかん

急行十三時間

甲賀 三郎

「新青年」1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,724 字 · 24 页

青空文庫

あいつらは巧くすり変えるからね」

私は又不安を感じて来た。中を改めたくて耐らなくなった。一度ポケットに手を入れかけたが、ふと気がつくと、畜生! と思った。彼は彼の面前で私が紙包を開けるのを待っているのだ。彼の仲間に私の探偵をどこかへ誘き出させ、私に不安を感じさせて金包を改めさそうと云うのだ。そうしてその隙を覗って奪おうと云うのだろう。その術に乗るものか。私は額から汗をダラダラ流しながら、右手を内ポケットへ入れて、しっかり紙包を握った。が、何とも云えない不安が襲って来る。すり変えられたか知らん、そんな筈はない、だがあの怪しい老翁はどうしたのだ。探偵は?

ここで金を改めたって、寝ているとは云え乗客を満載して走っている急行列車の中だ。街頭で小児の手から奪うような訳には行くまい。調べてみよう。その方が安心だ。

私は横を向いて、素早くポケットから包を引出して封を切った。手早く開けて見ると、中から一束の紙幣が出た。一番上に見覚えのある新しい百円紙幣が代表的に現われている。私は安堵の胸を撫で下すと共に、急に馬鹿馬鹿しくなった。が、未だ不安だ。紙幣の束が何だか違うような気がするのだ。