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かいきいっせきばなし

怪奇一夕話

岡本 綺堂

「中央公論」1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,745 字 · 18 页

青空文庫

そこに怪談の価値があるのであって、流石に支那の怪談の開祖と称してよい。唐の※(「暇-日」、第4水準2-3-64)成式の「酉陽雑爼」は正続あわせて三十巻、一種の三才図会式の物ではあるが、これにも「捜神記」同様の怪談が多い。支那に所謂「志怪の書」の多いのは周知の事実で、まったく汗牛充棟と云えるであろう。又、普通の随筆又は筆記のうちにも大抵は幾多の怪奇談を編入してあるから、量に於ては実におびただしいものであるが、その根源は「捜神記」と「酉陽雑爼」の両書を出でない。殊に後世の作物には教訓的の勧懲主義を多量に含んでいるものが多いので、怪談としての価値がいよいよ稀薄になっている。

清の紀暁嵐の「閲微草堂筆記」は有名の大著で、奇談怪談のたぐい三千余種を網羅し、斯界に新生面を拓いたと称せられているが、一方には宋儒の説を排撃し、又一方には例の勧懲主義を鼓吹するに急にして、肝腎の怪奇趣味を大いに減殺している感がある。それと同時代の作物で、袁随園の「子不語」もまた有名の大著である。世間一般の定評では、「子不語」を「閲微草堂筆記」の下位に置くようであるが、私などの観るところでは、「子不語」