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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

僕の心臓は、安南人の巨きな心臓だ。僕の鉄腕は、戦いを要求している。この後甲板で、どっちが勝つか、一騎打ちの勝負をしよう」

振かえった怪老人は、急に、会心の笑いをもらした。

「ハハハ。それだ、わしの求めていたことは」

「え!」

「つまり、わしは、心臓は、動物の生命の原動力であるかどうかを実験したのじゃ。小僧、おまえの小さな心臓の代りに、あの安南人の大きな心臓を移し替えてみると、わしの学説のとおり、おまえは、あの大きな安南人のように、勇敢に、力強くなったじゃないか。ハハハハハ。もうそれでよい。わしと妥協しよう」

「それじゃ、いまのは嘘ですか。眼球を取替ようというのは」

「嘘ではないが、しばらく中止さ。ハハ……」

それから、二月は無事に過ぎた。

怪老人は、ふたたびメスを揮おうとはせぬ。が、油断はならない。隙をうかがってまた、奇怪な解剖をやらぬともかぎらぬ。陳君は、それで、夜もろくに眠らず警戒しつづけた。

幽霊船は、長い漂流をつづけているうち、次第に南海の方へ進んでいるようだ。北洋で見うけた、氷の砕片や、寒流特有の海の色は、いつか消えて、暖かい風が甲板を吹いていたが、このごろでは、むしろ、熱風が肌に感じられるようになり、椰子の実が、ひょうひょうと波にうかんでいるのを見うける。