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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

穴

毎日毎日、気がくさくさするような霖雨が、灰色の空からまるで小糠のように降り罩めている梅雨時の夜明けでした。丁度宿直だった私は、寝呆け眼で朝の一番電車を見送って、やれやれと思いながら、先輩であり同時に同僚である吉村君と、ぽつぽつ帰り支度にかかろうかと漸く白みかけた薄墨の中に胡粉を溶かしたような梅雨の東空を、詰所の汗の浮いた、ガラス戸越しに見詰めていた時でした。思い出したように壁掛電話がチリン、チリン、チリチリンと呼出しを送って来たのです。そばにいた吉村君が直ぐ受話器を外しましたが

『え、何、ポンコツか――ふーん、どこに。うん、うん、行こう』

といってガチャリと電話を切って

『おい、ポンコツだとよ、今の、番が見つけたっていうから終電車にやられたらしいナ』

と腐ったような顔をしていうのです。このポンコツというのは我々鉄道屋仲間の言葉で轢死のことをいうのですが、私も昨年学校を卒てすぐ鉄道の試験を受け、幸い合格はしたもののどういう関係かさんざ焦された揚句、採用になったのは秋でしたので、この梅雨の季節を迎えるのにはまだ半年ばかりしか経っていなかったのです。しかしそれでも私の仕事が保線区であったせいか既に三四回のポンコツに行きあっていました。