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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

『あ、やっぱり――。どうしたんです。馬鹿にあわててるじゃないですか』

『え?』

そういった男の顔を覗き込んだ鷺太郎は、

(あっ――)

と、も少しで叫ぶところであった。

その男が、あの山鹿十介なのだ。

山鹿十介は、浴衣がけに下駄ばき、おまけに、釣竿までかついでいた。

『どうしたんです、一体……』

相手は至極落着いていたが、鷺太郎は、しばらく返事の言葉が思いつかぬほどだった。

タッタ今まで、山鹿だと思っていたその本人が、いまここに、怪訝な顔をして突立っているではないか。

(それでは、あの白服の山鹿十介は何処へ行ったのだ――)

山鹿の別荘から出て来たのは慥だけれど、尤も考えてみれば、後姿を、それも輪廓だけで、或は別人だったのかも知れない――と思いついた。

(それにしても、あの男は何処へ消えたのだろう――)

その男が、殺人の下手人であることは、十中八九間違いはないことだけれど、どうやら山鹿と思ったのは、暗がりの見違いだったらしい。

『どちらへ……』

『夜釣りに行こうか、と思ってね――、どうしたんです。お化けでも出たんですか』

山鹿は、例の皮肉な笑いを、浮べていた。

『お化け?――いや、それどころじゃない、人殺しですよ』