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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

『ほほう、同病ですか、あなたも……』

私も彼の軽い口に、すっかり気が溶けて、いつか肩を並べて渚を歩いていた。今日も海風は相当に強く、時々言葉が吹きとばされることがあったが、漸く夕焼もうすれ、すすめられる儘に、太郎岬の上にある、という彼の家を訪れることを決心した。それは、

『僕は医科をやったんですが、今は彼女のために、総てを抛って手馴れぬ作曲に熱中しているんですよ……』

といった言葉が、ひどく私の好奇心を唆たからであった。

二

その男の家は、太郎岬の上の、ぽつんとした一軒家であった。

其処まで登るには、細いザラザラした砂岩を削ってつけられた危なっかしい小径を、うねうねと登って行くのであるがしかし、さて登り切って見ると、其処からは相模湾が一望の下にくり展げられて、これが昼間であったならば、どんなにか素晴らしい眺めであろうと思われた。が、今は陽も既に落ちて、うすら明りの中に、薄墨を流したような、襞を持った海が、ふっくらと湛えられ、空には早くも滲出た星が、次第にうるみを拭ってキラキラと輝きはじめていた。

然し、その素的な眺望にも増して、私の眼を欹たせたのはその八畳と四畳半の二間きりの亭のような小住宅に、どうして引上げられたのか、見事な黒光りをもったピアノが一台、まるで王者のように傲然と君臨している様であっ