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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

た。

『自炊をされているんですか――』

やがて私は、一向に台所道具が眼につかないので訊いてみた。

『いや、町の仕出屋から三度三度とっているんですよ……、それも此処が不便なもんですから出前の小僧の奴に月三円のコンミッションを約束させられたという曰くがあるんですが、でもここなら幾ら日がな一日、ピアノを叩いていようと、大声で唄っていようと、一向気兼ねがありませんからね』

『まったく、うまいところがあったもんですね』

と、私は無意味に合槌を打って、

『で、もう大分作曲されましたか』

『いや、もうそろそろ一年が来ますが、まだ序の口にも達しませんよ』

『へえ、たいしたもんですね、なんですか、シンフォニーですか』

『いやいや、ただの流行歌ですよ――』

思わず唖気にとられた私は、その男の顔を見かえした。

ところが、その男は、至極真面目な顔をしていうのであった。

『流行歌です、――流行歌ですが、僕のはありふれた流行歌ではないんです。必ずヒットしなければならぬ、という論理的に割出された曲なんですよ……

流行歌の数は、実に夥しいものです。しかしその結果、どこかで使われたメロディが、他の歌にちょいちょい出て来ます(これはあなたも既にお気づきでしょうが)それはそうなるべきで、人間の声に限度があり、テンポにも制限があるとすれば、いつかは作曲も、殊に