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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

蝕眠譜

一

(一体、どうしたのだろう……)

私は、すくなからず、不安になって来た。あの親友黒住箒吉がまるで、ここ二三ヶ月というもの消息不明になってしまったのだ。

私が、自分から「親友」などと呼びかけるのは、聊さかキザだけれど、でも、彼には、あの変屈な金持黒住箒吉には、友だちというものは、この私一人しかいない筈なのだ。

黒住と私とは二代続きの、おやじから受けついだ交友であった。彼の父が家に遊びに来た時など、いつも彼の変屈を心痛して、

『春ちゃん、箒吉はアンナ風だけれど、よろしくお願いしますよ……時々お遊びに来て下さい――』

と、いかにも父親一人の家庭らしい、優しい、思いやりのある言葉で、私を誘ってくれた顔を、フト思い出すのである。

いまは、もう彼の父も、私の父も既に亡くなってしまって、第二代目の交友に引つがれてしまった。そして時々私は箒吉のことを偲い出す度に、手紙のやりとりなどして、死んだ彼の父に、お義理の端を済ませていたのだが。――

彼は、なかなか自分から私に呼びかける男ではなかったけれど、私の出す手紙には、きっと、木霊のように、返事を寄来すのだった、彼もたしかに寂しいには違いない、彼も決して悪い男ではない、ただ、世の人との交際の術を全然持ち合せていないのだ――と、私は思っていた。