轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おそろしきさくご

恐ろしき錯誤

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,075 字 · 46 页

青空文庫

それは実際不思議なことだった。

何一つ彼女を猛火の中へ導く様な理由というものがなかった。変事の為に遠方から集って来た親族の人達の間には、これはきっと、あまり恐ろしい出来事の為に逆上して、気が変になったせいだろうという説が勝を占めた。

「私の知っているあるお婆さんは、そら火事だというのに、うろたえて了って、いきなり米櫃の前へ行って、丹念にお米を量っては桶の中へ入れていたって云いますよ。ほんとうに、お米が一番大切だと思ったのでしょうね。こんな時には、よっぽどしっかりした者でも、うろたえて了いますからね」

妙子の母親は、ともすれば、咽び相になるのを堪え堪えして、鼻の詰った声で、こんなことを云ったりした。

「可愛い女房が、若い身空で、しかも子供まで残して、死んでしまった。これ丈けで、もう男の心を打ひしぐには十分過ぎる程十分なんだ。その上に、見るも無慚なあの死に方、……君にあいつの死顔を一目見せて遣りたかった。若し、あの死骸を前に置いて、君にこの話が出来るんだったら、まあどんなに深刻な、劇的な効果を収め得た事だろう。

あいつの死骸は真黒な一つの塊に過ぎなかった。