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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
その日の朝刊の社会面には、どの新聞でもトップへもって来て三段あるいは四段を割き、
「帝都に吸血鬼現る?
――日比谷公園の怪屍体――」
とデカデカに初号活字をつかった表題で、昨夕の怪事件を報道しているところを見ても、敏感な新聞記者たちは早くもこれが近頃珍らしい大々事件だということを見破ったものらしい。
大車輪で活動を続けている大江山課長は五分間だけの会見という条件でもって、新聞記者団を応接室へ呼び入れた。ドヤドヤと入ってきた一同は、たちまち課長をグルッと取巻いてしまった。
「五分間厳守! あとは云わんぞ」
と、課長は先手をうった。
「すると本庁では事件を猛烈に重大視しているのですネ」
と、早速記者の一人が酬いた。
「犯人は精神病者だということですが、そうですか」
と、他の一人が鎌をかけて訊いた。
「犯人はまだ決定しとらん」
課長は口をへの字に曲げていった。
「法医学教室で訊くと被害者の血は一滴も残っていなかったそうですね」
「莫迦!」課長は記者の見え透いた出鱈目を簡単にやっつけた。
「犯人は、被害者の実兄だと称している西一郎(二六)なのでしょう」
「今のところそんなことはないよ」