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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

「ははア、するとああいう事件が何かジュリアを刺戟するのかなア。だが待ちたまえ、今日は何も吸血鬼が犠牲者を出したという新聞記事を見なかったぜ。はッはッ、とうとう君に一杯担がれたらしい。はッはッはッ」

「はッはッはッ」

一郎は批評家に嫌悪を催したのか、怒ったような顔をして、そこを去った。

痣蟹の空中葬

丁度その頃、捜査本部では、雁金検事と大江山捜査課長とが六ヶ敷い顔をして向いあっていた。机の上には、青竜王が痣蟹の洋服の間から見付けた建築図の破片が載っていた。

「雁金さんはそう仰有るですが、どうしてもあの覆面探偵は怪しいですよ」と大江山はまたしても、青竜王排撃の火の手をあげているのであった。「第一あの覆面がよろしくない。本庁の部下の間には猛烈な不平があります。このままあの覆面を許しておくということになると、統制上由々しき一大事が起るかもしれません」

「気にせんがいいよ。そうムキになるほどのことではない。たかが私立探偵だ」

「いまも電話をかけましたが、青竜王は所在が不明です。その前は十日間も行方が分らなかった」

「まアいい。あれは悪いことの出来る人間じゃないよ」