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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

ラジオが叫ぶ一イ二イ三ンの号令に合わせて、課長は巨体をブンブンと振って、ラジオ体操を始めた。彼は何とはなしに、子供のような楽しさと嬉しさとが肚の底からこみあげて来るのを感じた。

「よしッ! この元気でもって、帝都市民の生活を脅かすあらゆる悪漢どもを一掃してやろう」

課長はその悪漢どもを叩きのめすような手附きで、オ一チ二イと体操を続けていった。しかしその楽しさも永くは続かなかった。そこには大江山捜査課長の自信をドン底へつき落とすようなパチノ墓地の惨劇が控えていたのであった。昨夜起ったそのパチノ墓地事件の知らせは、雁金検事からの電話となって、ジリジリと喧しく鳴るベルが、課長のラジオ体操を無遠慮に中止させてしまった。

「お早ようございます。ええ、私は大江山ですが……」

「ああ、大江山君か」と向うでは雁金検事の叩きつけるような声がした。――御機嫌がよくないナ、「君の部下はみんな睡眠病に罹っているのかネ。もしそうなら、皆病院に入れちまって、憲兵隊の応援を申請しようと思うんだが……」

検事の言葉はいつに似合わず針のように鋭かった。

「え、え、一体どうしたのでしょうか。