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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
彼は雁金検事に誘われて、いささかゴルフを嗜んだ。この秋晴れにゴルフは懐しいスポーツであったが、なんの因果か、今日は懐しいどころか、わざわざお苦しみのためにゴルフ場を覗きに行かねばならないことを悲しんだ。
車を玉川ゴルフ場に走らせたまではよかったけれど、クラブの玄関をくぐるなり、
「いよオ、大江山君。これはどうした風の吹きまわしだい」
と背中を叩く者があった。ハッと思って後をふりかえってみると、そこには思いがけなくも、雁金検事がゴルフ・パンツを履いてニヤニヤ笑っていた。そればかりではない。検事の後には、彼の馴染の顔がズラリと並んでいたので駭いた。それは蝋山教授、西一郎、赤星ジュリア、矢走千鳥という面々で、これでは吸血鬼事件の関係者大会のようなものだった。ただ肝腎の覆面探偵青竜王とキャバレーの主人ポントスとが不足していたが、この二人もどこからか現れてきそうであった。
「丁度いい。一緒にホールを廻ろうじゃないか」と検事は腕を捉えた。
「ぜひそう遊ばせな。――」とジュリアたちも薦めた。
結局大江山課長は、その仲間に入った。背広を着てきたので、恥をかかずに済んだのは何よりだった。