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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
至急会いたいのです。教えて下さい」
「教えてくれって? 君が行って会えばいいじゃないか」
検事は妙な返事をした。課長は検事が機嫌を損じたのだと思って、あとは口を噤んだ。
丁度そのときだった。クラブ館の方で、俄かに人の立ち騒ぐ声が聞えた。課長がふりかえると、クラブ館のボーイが大声で叫んだ。
「皆さん、早く来て下さーい。御婦人が襲われていまーすッ」
御婦人?――検事と課長とはクラブを投げ捨て、クラブ館へ駈けつけた。
襲われた裸女
この突発事件が起ったところは、クラブ館の中の噴泉浴室のあるところだった。
それより三十分ほど前、その婦人用の浴室の二つが契約された。もちろんそれは赤星ジュリアと矢走千鳥の二人が、汗にまみれた身体を噴泉で洗うためだった。当時この広い浴場は、二人の外に誰も使用を契約していなかった。
ジュリアは第四号室を、千鳥の方はその隣りの第五号室を借りた。その浴室は、公衆電話函を二つ並べたようになっていて、入口に近い仕切の中で衣類を脱ぎ、その奥に入ると、白いタイルで張りつめた洗い場になっていて、栓をひねると天井からシャーッと温湯が滝のように降ってくるのであった。