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きょうふのまぼろしへいだんいん

恐怖の幻兵団員

大倉 燁子

「オール読切 二巻五号」1950(昭和25)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页

青空文庫

本邸では父が重態だというのに何故一雄は来ないのだ、と、やかましく私が攻められていましたので、行方がわからないとも申せず、風邪で熱が高くて起きられぬと嘘を吐いて、その場、その場を胡麻化しているのですが、母にだけは胡麻化しきれず、母にだけ私は白状してしまったんですの。

親戚の者達はもともと私があの家の後継者の妻となる資格はない、と、反対しきっているのですから、夫のいないのをいいことにして、薫さんに家督相続をさせようとしておりますのです。

そういうわけですから父の息のあるうちに、何んとかして探し出して頂きたいと思うのです。あれだけ脅やかされていたのですから、正気を失った人になっているかも知れませんが、生きてさえいてくれたら、と、そればかり念じているのですけれど、今日で一週間目になりますのに、どこからも便りがないので、あるいはもうこの世にはいないのではないか、などと思ったりして、私は生きた心地もございません。先生はどうお思いになりますか? 今はもう先生のお力にお縋りするよりほか、私には手のつくしようがありませんの、どうぞ、先生、お願いですから――」

夫人は涙ぐみながら、私の前に手を合せて頼むのだった。