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あくむ

悪夢

豊島 与志雄

「改造」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,930 字 · 32 页

青空文庫

私は急いで残りの酒と肴とを平らげて、ぷいと外に出た。蒸し蒸しするどんよりした晩だった。空もじっとりと汗ばんでるかと思われた。煤けたままを拭き込まれて黒光りのしてる大黒柱、そういった気持を私は力強く懐いて、狭いうねうねした路次の方へ滑り込んでいった。出口のない息苦しい生活にいじめつけられた私のうちにも、なお強烈な熱っぽい力が残っていた。私は見当り次第のとある家へ、こちらからはいるともなく誘い込まれるともなく、よろよろとした酔っ払いの足取りで、臆面もなくにゅーっとはいっていった。

「誰でもいいから一人来てくれ。」

云いすてて私は二階の狭い室に通った。が実は、誰でもいいのではなかった。私が求めているのは、健かな豊満な、殴りつけてもびくともしないような、そして抱擁力の強い肉体をであった。然しまさか、肥っちょの大きいのをとは註文しかねた。運を天に任せる気で待っていると、否待つまでのことはなく、私のすぐ後からやって来たのは、要求とはまるで反対の、身長も身柄も貧弱な小女であった。栄養不良で発育不完全な、いじけきった者のように思われた。

「君は一体いくつになるんだい。