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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
「女性改造」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页
退出時刻になると、私は待ちかまえていて真先に立ち上った。
往来に出て、斜陽を浴び、初めて大きく息がつけた。ところが、笠原が私を追っかけてきた。
「ちょっと、一杯つき合わないか。」
私は眉をしかめて、黙っていた。
「焼酎にしようか、ビールにしようか。金は僕が持ってるよ。」
彼はいつも奇妙に金を持ってるのである。独りでビヤホールにきめて、途中でウイスキーの小瓶を買った。ジョッキーにウイスキーをたらして飲むけちなやり方を、彼は却って得意がってるのだ。
秋の凉気に、ビヤホールはすいていた。
「君はどう思う、今日の梅田の通牒を。」
彼は腹立たしげにビールをあおった。私の無関心な態度に、彼はなおいきり立ったようだ。
「懇談会とは何だい。なぜ組合会議としないのか。円満辞職を聊かなりとも……ばかな、この失業時代に、聊かなりとも望む奴があるものか。何のことはない、退職希望者を無理にも拵え出して、人員整理に協力しようというわけだ。あいつ一人の考えじゃないね。専務と共謀の芝居に違いない。」
それから彼はいろいろなことを饒舌った。組合運動などと言っても、オフィスの中に幽閉されてるわれわれは、まるで虚勢されてるのと同じで、何にも出来はしない。