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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
「女性改造」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页
」
「やきいも屋だ、やきいも屋だ。」
淋しさが毒舌になってゆき、その毒舌が、しみじみと自分の心にしみた。
ジョッキーを何杯か、そしてウイスキーの小瓶も空になり、私は笠原と別れた。
暗い夜、掘割のふちを歩いていると、空の星が水面に降ってくるようで、なにか怯えた気持ちになる。
その都心近くから、国鉄電車に乗り、途中で私鉄電車に乗り換えて、そして家まで、だいぶ時間がかかるのだ。
乗換え駅の裏口のそばに、よい日本酒を安直に飲ませる家がある。盛りきりのコップでも、銚子に盃でも、どちらでもよい。宵のうちは客が込むが、遅くなると閑散だ。私は中途半端に飲んだ時とか、なにかやりきれない気持ちの時とか、そこに立寄る癖がついていた。
ふらりと飛びこむと、客は少なかった。
「いらっしゃい。今晩、遅いのね。」
みさ子はにこりともしないが、声の調子は愛想がいい。
「やあ、しばらく。」
「あら、しばらくだって……もう酔ってらっしゃるの。」
考えてみると、一昨日も、その前日も、ちょっと寄ったのだった。だが、どうも、しばらくというのが実感なのだ。すべてのことが、遠くにあるように思われた。