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かなしいごかい

悲しい誤解

豊島 与志雄

「女性改造」1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页

青空文庫

まだ三つの娘は箸がよく持てず、匙を使っている。馬鈴薯の煮たのを妻がつまんでやると、娘は頭を振った。

「じゃがいもよ。好きだったでしょう。もういやなの。」

「あっち、あっち。」

娘は他の皿の方へ手を差し出している。

「じき倦きるのね。こんどは、おいしいおいもが来ますよ。おさつ、さつまいも、知ってますね。あ、それから、やきいも、綾ちゃんはまだ食べたことがないでしょう。おいしいのよ。やきいも屋が出来るそうだから、そうしたら、たくさん買ってあげましょうね。」

ほかほかした焼芋のことを、妻は説明してやっていた。綾子に聞かせると共に、自分自身にも聞かせてるのである。今年は焼芋屋の商売が許可されると新聞で見たのだ。

ふっと、私は涙を誘われそうになった。単なる感傷ではない。やきいも、やきいも。そんなつまらぬ物に、何かの楽しみを見出してるらしい妻が、そしてまた恐らく、同様な楽しみを見出すだろう綾子が、憐れなのだ。この母と娘の存在そのものが、憐れなのだ。縁につながる私自身にも、その憐れさがはね返ってくる。

鞄の中に、小風呂敷包みの弁当をつっ込んで、私は電車までの道を急いだ。