轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おもいで
想い出
佐藤 垢石
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,792 字 · 8 页
場所を替えて、そこから三十間ばかり上流の沈床のかげを試みたが、やはり釣れなかった。
けれど、ためになるものを見た。それは、熱心に川面を見つめながら鈎を上げ下げしていると、沈床のかげから二、三尾の大鮎が追いつ、追われつして、互いに絡まりながら泳ぎ出してきた。そして、沈床の肩の瀬の落ち込みへ突進してゆくのである。いつぞや父から、友釣りというのは、鮎の闘争性を利用した釣りであると教えられたが、では今この沈床のかげから出てきた鮎のように、囮鮎と川鮎とが激しく闘ううち、ついに囮鮎に仕掛けた鈎に川鮎が引っ掛かってしまうのであろう、と考えた。
ようやくにして、五寸ばかりの鮎を釣った。雀躍して、上流の沈床の上へ取って帰って竿へ友釣りの仕掛けをつけ、この鮎を囮にした。師匠もない、道具も揃わない、俄仕立ての友釣りを試みる自分である。手網も、囮箱も、通い筒も持たぬ。魚籠のなかの鮎は掌で捕らえ、そこでそのまま、かねて聞き覚えの通り撞木の鼻環を鼻の穴へ突き通して、瀬のなかへ放り込んだのであった。長さ二間の鮒竿、川幅はおよそ五間。沈床の肩に立って斜めに上流へ向かい、瀬の吐き出しへ囮鮎を遊ばせた。