轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
山川方夫『愛のごとく』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛のごとく、演技の果て、その一年。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,908 字 · 210 页
縮れ毛のひどい鷲鼻の士官だった。
あとで考えれば、彼は本国に帰る士官たちの一人だったのだろう。「ステイツ、ステイツ」という語のまざる兵士たちの私語を耳にしながら、だが信二はまだそんな事情は知らなかった。
メキシカンのように首の太い、栗いろの髪の縮れたずんぐりとした男だった。信二は、はじめからその精力的な印象が、気にくわなかった。兵士たちの掛け声や口笛にこたえて士官は片手をふり、踊る人びとをかき分けてステージの前に歩いてきた。よくみると男は少尉だった。
ちょうど、ホールにはラグの速いリズムがあふれていた。兄が顔を充血させ、けんめいにBフラットのハイ・ノートを吹きつづけている。兄の額は汗で光っていた。
片手にジンらしい壜をだらりと下げ、少尉は彼をさけて踊って行く兵士や女たちをじろじろ見た。その目が、右隅のテーブルにとまった。
信二は気をとられた。手の動きを忘れていた。少尉は、まっすぐに黒いドレスの女のいるテーブルに歩いて行った。テーブルにたたきつけるようにジンを置いた。
首をかしげ、上目づかいに笑い、頭を左右にふる「黒の女」の動作で、少尉が踊りを申し込み、ことわられているらしいのがわかった。