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あいよあい
愛よ、愛
岡本 かの子
岡本かの子『愛よ、愛』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛よ愛、現代若き女性気質集、女性の不平とよろこび、時代色、異性に対する感覚を洗練せよ、女性崇拝、山茶花、桃のある風景、病房にたわむ花、異国食餌抄、巴里の秋、売春婦リゼット、巴里のむす子へ、新時代女性問答、家庭愛増進術、良人教育十四種、岡本一平論、かの女の朝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,138 字 · 99 页
あちらで相当な位置も得、どう考えてもあちらに向いて居る息子の芸術の性質を考えるとこちらへ帰って来るようには言えない。またかの女の芸術的良心というようなものが、それは息子の芸術へというばかりでないもっと根本の芸術の神様に対する冒涜をさえ感ずる。芸術的良心と、私的本能愛との戦いにかの女はまた辛くて涙が眼に滲む。息子の居ない一ヶ所空っぽうのような現実の生活と、息子の帰って来た生活のいろいろな張り合いのある仮想生活とがかの女の心に代る代る位置を占めるのである。かの女は雑草が好きだ。此の空地にはふんだんに雑草が茂っている。なんぼ息子の為に建ててやる画室でも、かの女の好みの雑草は取ってしまうまい。人は何故に雑草と庭樹とを区別する権利があったのだろう。例えば天上の星のように、瑠璃を点ずる露草や、金銀の色糸の刺繍のような藪蔓草の花をどうして薔薇や紫陽花と誰が区別をつけたろう。優雅な蒲公英や可憐な赤まま草を、罌粟や撫子と優劣をつけたろう。沢山生える、何処にもあるからということが価値の標準となるとすれば、飽きっぽくて浅はかなのは人間それ自身なのではあるまいか。だが、かの女が草を除らないことを頑張れば息子も甘酸っぱく怒って、ことによったらかの女をスポーツ式に一つ位いはどやすだろう。