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あいよあい
愛よ、愛
岡本 かの子
岡本かの子『愛よ、愛』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛よ愛、現代若き女性気質集、女性の不平とよろこび、時代色、異性に対する感覚を洗練せよ、女性崇拝、山茶花、桃のある風景、病房にたわむ花、異国食餌抄、巴里の秋、売春婦リゼット、巴里のむす子へ、新時代女性問答、家庭愛増進術、良人教育十四種、岡本一平論、かの女の朝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,138 字 · 99 页
逸作やかの女は近頃では息子の鋭敏な芸術的感覚や批判力に服するようにさえなった。だが、息子のそれらの良質や、それに附随する欠点が、世間へ成算的に役立つかと危ぶまれるとき、また不憫さの愛が殖える。
――おい、小学校の方でなく、こっちから行こうよ。
――何故。
――だって、子供達が道に一ぱいだ。
――早く、墓地へ行って手紙見度いから近道行こうってんでしょう。
――………………。
――え、そうでしょう。
――俺は子供きらいだ。
そうだった。かの女はそれを忘れて居たのだ。逸作が近道を行って早く息子の手紙を見度いのも本当だろうが、逸作はたしかに、ぞろぞろ子供に逢うのは嫌いだった。子供は世の人々が言い尊ぶように無邪気なものと逸作もかの女も思っては居なかった。子供は無邪気に見えて、実は無遠慮な我利我利なのだ。子供は嘘を言わないのではない。嘘さえ言えぬ未完成な生命なのだ。教養の不足して居る小さな粗暴漢だ。そして恥や遠慮を知る大人を無視した横暴な存在主張者だ。(逸作もかの女も、自分の息子が子供時代を離れ、一つの人格として認め得た時から息子への愛が確立したのだ。)本能で各々その親達が愛するのは宜い。