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つきもの

憑きもの

豊島 与志雄

「改造文芸」1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,983 字 · 27 页

青空文庫

お上さんも酒を飲んだ。

「狐や狸ならいいんですけれど、蛇に憑かれたら困りますね。」

蛇に憑かれた怪談が出てきた。女はだいたい怪談が好きなものだ。

そして私は怪談に酔い、酒に酔い、のびてしまった。炬燵を拵えて貰ってごろ寝をした。憑くぞ、憑くぞ。秋子と言い合っているうちに眠った。――その夜、私は秋子と抱き合ってキスした。

私は秋子を特別に好きではなかったが、嫌いでもなかった。色が白く、下ぶくれの顔立で、まあ十人並以上の容姿と言える。ただ、へんに気になるところがある。第一はその眼眸で、ちょっと白痴的なものを感じさせることさえある。それから、頭は悪くなく、はきはき判断をつけるが、それが一つ一つの事柄に就いてであって、全体としてはどこかに断層みたいなものがあるらしくも見える。杉幸のお上さんの姪とかいうことだが、勿論処女ではなく、年は三十に近い。

中一日おいた次の晩、彼女はウイスキーを一本ぶらさげて、私のアパートへ遊びに来た。

「店の方はいいのかい。」

「お友だちのところへ行くことにして、出て来ました。」

「そんな物を持って来ると、ほんとにとり憑くよ。」

彼女はにこりと笑って、私の方へじっと眼を据えた。