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らんだのかるた
懶惰の歌留多
「文芸」1939(昭和14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,369 字 · 25 页
冠氏は、薄紅の山茶花の如く寒しげに、肩を小さく窄め、困惑の有様であった。
「おい。」と由良氏は声を掛けた。
冠氏は、きょろとして由良氏を見つけ、にっと笑った。由良氏も、すこし頬を染めた。
「行こう。」
「うむ。」冷雨の中を、ふたり並んで歩いた。
一つの傘に、ふたり、頭を寄せて、歩いていた。そうして、さだめの地点に行きついた。
「用意は?」
「できている。」
すなわち刀を抜いて、向き合って、ふたり同時にぷっと噴き出した。切り結んで、冠氏が負けた。由良氏は、冠氏の息の根を止めたのである。
刀の血を、上野の池で洗って清めた。
「遺恨は遺恨だ。武士の意地。約束は曲げられぬ。」
その日より、人呼んで、不忍の池。味気ない世の中である。
ち、畜生のかなしさ。
むかしの築城の大家は、城の設計にあたって、その城の廃墟になったときの姿を、最も顧慮して図をひいた。廃墟になってから、ぐんと姿がよくなるように設計して置くのである。むかしの花火つくりの名人は、打ちあげられて、玉が空中でぽんと割れる、あの音に最も苦心を払った。花火は聞くもの。陶器は、掌に載せたときの重さが、一ばん大事である。