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わがじんせいかん
我が人生観
08 (八)安吾風流譚
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,617 字 · 23 页
あるいは伴氏が、立樹を全部切ったのかも知れない。
彼はそこで牛などを飼い、自然人の生活をやるつもりであったのかも知れない。二十何年ほど前の「改造」へ、彼はそんな夢を書いていた。当時はトーローの森の生活などが読まれたり愛されたりしていたような時世でもあった。文学で云うと、新感覚派が現れたころ。一方にコンミュニズムが、一方にロマンチシズムが、ひろがりはじめていたころ。
彼はともかく、あこがれていたばかりでなく、実際にやりはじめたのである。この中腹へ小屋をつくって住んだ。なかなか、よく出来た小屋であった。彼が自分の手だけで作った小屋だ。杉の木だらけの山であるから、その杉を切って小屋をたて、杉の皮で屋根をふいたものであるが、雨もりなどはしたことがない。小屋は十二畳ぐらいの一室があるだけ。しかし土間に屋根だけかけた吹きさらしの台所があって、まんなかに穴を掘って火をもやし自在鍋をかけるようにできている。煮物しながら読書する習慣らしく、吹きさらしの中に書棚があって、二百冊ぐらいの書物があった。吹きさらしの中ではあるが、小屋に接した羽目板の際であるから、風雨にうたれて汚れたような跡はなかった。