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わがじんせいかん
我が人生観
08 (八)安吾風流譚
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,617 字 · 23 页
彼はたそがれ時に小屋の附近に現れるモモンガーを弓で落して煮て食っていたそうであるが、私が小屋をかりた時にも、その弓はちゃんと小屋に附属していた。竹でつくった手製の弓である。私はモモンガーは食わなかった。ゲテモノは食えないタチなのである。モモンガーは本来の名はムササビ。猫の四足にコウモリの翼を張ったようなケダモノである。たそがれ時に現れるのはコウモリと同じく、木の枝から枝をとんで食物をあさる習性らしい。
私は二十の年に東京近郊の村落で小学校の先生をした。代用教員である。そこは今では東京都内の賑やかな市街地であるが、当時はまったくの武蔵野。田園と自然林の村落であった。ところが、その村に、山中の自然生活をひきあげてきた彼が住んでいたのである。彼はトルコ帽をかぶって歩いていた。私が子供たちをつれて自然林へ図画を書かせに歩いていたとき、トルコ帽の彼に出会わしたのである。私たちのその村に住んでいる期間だけのちょッとした交遊がはじまり、そして一夏、彼の山小屋をかりるようなことにもなった。
小学校の先生というものは、父兄の襲撃に手を焼くものである。自分の子供は特別な子供だときめこんでいる父兄がうるさいことをいってくるからで、こッちの公平な判断を理解してくれない。