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わがじんせいかん

我が人生観

坂口 安吾

08 (八)安吾風流譚

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,617 字 · 23 页

青空文庫

一方的にきめこんでいるばかりで、こッちの言葉に耳をかそうとする謙虚な態度も失っている。小学校の先生もおもしろいが、これが何より苦手です、と云って彼に打ちあけると、彼は静かに微笑して、

「それはね。こんなのは、どうですか。そんな父兄と話をする時には、はじめ、先方にききとれない細い声で喋るんですね。エ? と云って、先方がきき耳をたてますね。で、次第に、きこえるように声を高くして行くのです。相手は自然にこッちの話をきこうとする態度になっているんですね」

彼はこう奥儀を伝授してくれたが、これによって私が苦手から少しでも救われたという効き目はなかったようである。この伝授は後日に悪影響を残している。私は人と話していて、自分の声が細いのに気がつくと、意識してそうしていたわけではないが、彼の伝授を思いだして、甚しく切ない気持になる。悪事、詐術を使っているような不快な思いになやむのである。しかし、伝授した彼については、おかしさと、ややなつかしさを覚えるだけで、不快な気持はないのである。

小田嶽夫と海音寺潮五郎が芥川賞をもらった時だと思うが、レインボーで文士をまねいて授与式があった。