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わがじんせいかん

我が人生観

坂口 安吾

08 (八)安吾風流譚

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,617 字 · 23 页

青空文庫

その食卓で各自の自己紹介があった。私の番がきて、立ち上って姓名を名乗ると、席を向い合っていた菊池寛が、

「キミ、もっと、大きく」

と叫んだ。私は彼と一切交遊がない。彼が私によびかけたのは、この一言だけであるが、私はこのとき、いくらか顔をあからめたかも知れない。伴氏の伝授を思いだして、この時ぐらい味気ない思いに胸をつかれたことはないのである。

又、その村には、藤田という、彼の親友の画家が住んでいた。私はその絵を知らないが、一生ナマズの絵を書いていた人だそうだ。自ら鯰魚と号していたように記憶する。無邪気な楽天家であったが、恒産があったのかも知れない。しかし、貧乏のようでもあった。生れながらに手と足の指が三本ずつしかない人であったが、そういうことが気にかかる余地がなかった。先日因果物の小屋へ見物にはいったら、人間ポンプというのと一しょに、手足の指が三本ずつの男が見世物にでていたが、そんなものが見世物になるのが、むしろ私には異様であった。三本指の藤田画伯はなんの異状もないばかりか、甚しく健康な楽天家であったからである。

藤田画伯は生来仙人の趣があったが、伴氏はむしろアベコベの天性のように思われる。